Monday, November 26, 2007

横浜トリエンナーレ2008公開シンポジウム「国際展にいま問われているもの」






皆さんこんにちは、松岡です。


またもや時間が空いてしまいましたが、今回も前回に引き続き「横浜トリエンナーレ2008」の話題をお届けします。





実は先日、


横浜トリエンナーレ2008公開シンポジウム 「国際展にいま問われているもの」





と題した公開シンポジウムが開催されました。今日はその模様をごく簡単にですがお届けしようと思います。





が、その前に、そもそも「横浜トリエンナーレ」って何ですか?という方へ。





横浜トリエンナーレは、3年に1度横浜で開催している日本最大級の現代美術の祭典です。


美術館で開催されている展覧会に比べ規模も大きく、また建築、デザイン、ファッション、映画、音楽、パフォーミングアーツなど様々な芸術分野とのコラボレーション企画も関連プログラムとして同時進行するのが、大きな特徴の1つです。そうした様々なプログラムを、今回の横浜トリエンナーレ2008では、新港地区にある3つのメイン会場とその周辺環境を舞台に、2008年の9月から11月にかけて3カ月間展開します。


ジャパンファウンデーションは横浜市やNHK、朝日新聞社とともに横浜トリエンナーレ組織委員会をつくり、2001年2005年と過去2回横浜トリエンナーレを実施してきました。横浜トリエンナーレという1つの機会が、国内外の第一線で活躍するアーティストが表現をする場となると同時に、世界中の多様な文化、様々な価値観を背景に生まれる卓越した表現に多くの観客が触れるきっかけとなり、またそこでのコミュニケーションを通じて国際文化交流や相互理解の進展に寄与することを目指して実施している側面もあります。





より詳しい情報は、公式HPへ








さて、横浜トリエンナーレ2008の開幕まで1年を切りましたが、昨秋の記者発表以来、国内では長らく準備状況を公式に発表する機会がなかったという経緯があります。そういったこともあり、冒頭は水沢勉総合ディレクターによる準備状況の中間報告から始まりました。ただ今回は「作家は最終的に決まった段階で一斉に発表したい」という方針で進めているため、横浜トリエンナーレ2008のより具体的な話はあまりありませんでした。


しかし、シンポジウムのタイトルである「国際展にいま問われているもの」というテーマについては、今回のキュレーターが世界各地の国際展(ビエンナーレ、トリエンナーレ)でのキュレーション経験豊富な人たちであることもあり、国際展の現状であったり、その課題について幅広く話を聞くことができたと思います。





2007年は、夏にヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ(ドイツ・カッセル)、ミュンスター彫刻プロジェクトといった国際展が続き、秋にはリヨン・ビエンナーレ(フランス)、イスタンブール・ビエンナーレ(トルコ)、アテネ・ビエンナーレ(ギリシャ)と国際展が続いてきました。2008年はアジア大洋州地域で、シドニー、上海、光州、シンガポール、そして横浜と続く予定です。この状況に対し、バーンバウム氏からは、「現在、世界各地で同じような国際展が開催されており、昔は数も少なかったのでそれらを見ることが職業の人にとっても、一通り見ることは可能であった、しかし今となってはもう不可能」という話があり、また「かといってそれら一つ一つにどれだけの差異があるのだろか」という指摘もありました。実際、こうした状況下で横浜トリエンナーレは何ができるのか、どうしたらわざわざ横浜まできて観ようという形になるか、というディスカッションが、これまでキュレーターチームの中でも幾度となく議論されてきてます。





現代の状況では「資本」というファクターを見逃すことができないという話もありました。資本主義のルールによって様々なこと(作品価値であったり、流行のようなものであったり)が決定されるなか、キュレーターの役割自体が問われているという指摘もあり、この点についてはルフ氏からも、今こそキュレーターの役割を見つけるべきではないかという意見も出ていました。





オブリスト氏からは、「『国際展』のA to Zを作ろうとしている」という話から、"Bridge"とか"Dialogue"とか"Transnational"といったキーワードが出されました。さらに、例えば"Transnational"に関しては、歴史あるヴェネチア・ビエンナーレは国別参加という形で始まってきた経緯があるが、現代の国際展においては「国と国という枠を超えるのが1つのカギではないか」、「国際展が1つの『国境線』となるのかもしれない」といった暗示めいた言及もあり、まさに「国際展にいま問われているもの」を考える上で貴重な問題提起がなされました。





「国際展の場がいかに大きな器となって、コミュニケーションの場となりうるか」という発言もなされ、数ある中の1つの展覧会、というワクを越えた、「何らかの重要な1つのきっかけ」としての横浜トリエンナーレ像について、ディスカッションされている印象を持ちましたが、今回全体を通じて個人的に強く感じたのは、キュレーター陣全員がこの横浜トリエンナーレ2008という機会を真面目に考えているという印象でした。自分自身も、まだまだこれから横浜トリエンナーレ2008がどうなるか読めませんが(?)、今年度中には作家の情報もわかる見込みのようですので、是非お楽しみにお待ちください!





今回のシンポジウムの簡単な報告は、追って横浜トリエンナーレ2008のHPを通じて行われる予定ですので、ご関心のある方はそちらも是非ご覧ください。





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