Friday, July 25, 2008

茂山家狂言パリ公演レポート



はじめまして、パリ日本文化会館のOZです。





フランスのパリ日本文化会館からイベントの様子などをレポートしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします!





さて、フランスがバカンス・シーズンに入る直前の7月1日から7月3日までの3日間にかけ、パリ日本文化会館では茂山家狂言の公演を行いました。


当館の事業の中では伝統芸能はいつも人気がありますが、今回も最終日にはチケットが売り切れとなる盛況振り。


大掛かりな広報活動をしなかったにも関わらず、フランス人の観客が大変多く、日本の伝統芸能が注目を集めている様子がよくわかりました。


茂山七五三氏、次男の逸平氏には以前にも当館で公演をしていただいており、歌舞伎や能に次いで、フランスでも狂言が知られてきているのだとすれば嬉しい限りです。








しかし、狂言を上演するには能舞台が必要なのでは?、とお思いになった方もいらっしゃるでしょう。





実は、パリ日本文化会館にも、幕や橋懸りなど、能楽堂以外の日本国内の一般的な劇場で上演するとき使用するような一通りの設備があるのです!


これだけでもはじめてみるフランス人は目を見張ります。


今回の曲目は「棒縛り」と「伯母が酒」。


中でも「棒縛り」は海外で上演されることの多い演目だそうです。








一般に伝統芸能の公演に共通して言えることと思いますが、日本で一度だけ茂山家の狂言を拝見したときには、お客さんの多くが常連さんでした。


つまり、お客さんはすでに何度か上演される曲を見ていることが多く、話の展開も笑う場面も心得た上で客席に座っています。


ですので、もちろん自然な笑いも起きるのですが、それと同時に役者さんたちを応援する温かさが伝わってきます。





それにひきかえ、こちらでの公演は初めて狂言を見る人がほとんどですから、役者さんたちにとってみれば文字通りアウェイなわけです。


また、当然せりふは全て日本語なので、フランス人の観客は、舞台上方に設置された字幕を頼りに舞台を追うことになります。


さてさて、観客の反応はどうなのか、私たちスタッフもそわそわしながら見守りました。








番が始まると、会場が大きな笑いに包まれているのがモニターを通じてもよくわかりました。


字幕を見て反応するので、ときどき舞台と客席との間に時間差があるのも海外公演ならではですね。


熟練した役者さんによって身振り手振りを加えて演じられる狂言は、それだけでも笑いを誘います。


まして、今回の曲目はどちらもお酒にまつわるお話。


ダメと言われると余計に何としてでも飲みたくなり、あらゆる策を講じる主人公の太郎冠者(かじゃ)には、あきれる反面、ワイン好きのフランス人なら誰しも愛着を覚えてしまったのではないのでしょうか。


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大きな拍手でカーテンコールが終わったあと、劇場を出る観客の晴れやかな顔


これぞコメディの効果です。


そして、たまたま居合わせた人と「何であそこはこうだったの?」、「あの動作にはどのような意味があるのだろう」などと自由に意見を交わし、さらにもう一笑いするあたりはさすがフランス人です。


また、現地の在留邦人の方々からは、日本国内でなかなか見る機会のない伝統芸能に、こうしてパリで触れることができて良かったというお声をたくさんいただきました。


舞台を降りてからも笑顔を絶やされることがなく、本当にあたたかい茂山家の皆様には、感銘しきりでした! 


近いうちにまた当館で公演をしていただくことを担当者よりお願いして、次の公演を控えるご一行をお見送りしました。








ユニバーサルな笑いの要素が散りばめられた狂言、まだ見たことがないという方はぜひ見に行ってみてください。


室町時代に作られたお話に大笑いしている自分に気づくはずですよ。





パリよりレポートでした。それではまた!





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